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なかみせvol.42 中山の歴史を見守り続けてきた「たちばな寿司」、見世物小屋や映画館など懐かしい話も

なかみせvol.42 中山の歴史を見守り続けてきた「たちばな寿司」、見世物小屋や映画館など懐かしい話も

なかみせvol.42 中山の歴史を見守り続けてきた「たちばな寿司」

昭和3年の鳥観図にも載っている老舗の寿司店

中山商店会のお店を1件1件訪問して、その店の特徴を紹介する企画「なかみせ」。
「仲見世」でも「仲店」でもない「中山商店会とその周辺にあるお店とか」の略で「なかみせ」。
※仲見世(仲店)は寺とか神社の境内にある商店とか商店会の事。

 

今回訪問したのは、法華経寺参道の「黒門」のすぐ南にある「たちばな寿司」さん。店主の藤井武夫さんに話を聞きました。

「いつから『たちばな寿司』があるかって? オレにもわからないね。この地域の昔の鳥観図があって、それに載ってるってことだからずっと前なんじゃないかな」と藤井さん。

 

その話を聞いて、船橋西図書館の郷土資料室でこの地域の資料がないかと聞いてみました。熱心な図書館司書の皆さんがいろいろ調べて紹介してくれたのですが、その中に「松井天山画 千葉県中山町葛飾村鳥瞰」という貴重な絵図がありました。

「昭和参年」(1928年)と書かれた絵地図で、その中に確かに「すし橘屋」が描かれていました。場所も今と同じです。

聞くと藤井さんは昭和18(1943)年にここで生まれたとのこと。藤井さんが見てきた中山の風景に興味が湧き、その話を聞くことにしました。

 

「小さい頃はここで遊んでたよね。法華経寺の縁日には、境内に見世物小屋が建ってさ、おっかなびっくり見に行ったりしたよ。『ろくろっ首』を見た記憶があるね。あと、境内でチャンバラ映画をやっていたと思う。映画っていえば、小栗原蓮池公園のところに中山公会堂ってのがあってさ、そこで映画をやってたんでよく観に行ったもんだ。もっぱらチャンバラ映画。その公会堂が火事で燃えちゃって、たしか中村錦之助が『笛吹童子』を演ってた頃だったと思うんだけど。公会堂が焼けた後、『昭和館』と『銀映座』という映画館ができてさ。千葉興銀の道路はさんで向かい、佃煮の『はまや』さんの裏あたりかな」

調べてみると、映画版の「笛吹童子」は1954年に上映されていました。ということは、藤井さんが小学生の頃だったようです。

「小学校は小栗原小学校だよね。実は、この学校はもともと葛飾小学校の分校で、西部公民館の東にある稲荷神社の北側にあったんだよね。オレが小学校2年の時に今の小栗原小学校のところに移転して、その翌年に独立し小栗原小学校と呼ばれるようになったのさ。工場の跡地だったようで、はじめの頃は草むしりばかりをさせられた記憶があるよ」

 

藤井さんの記憶の通り、現在の小栗原小学校(船橋市本中山3-16-12)は、旧陸軍の協力工場「鈴木精密会社」の跡地だったと「小栗原誌」にあります。小学校卒業後、藤井さんは私立の市川中学・市川高校(学校法人市川学園)に進学したということでした。

 

「高校時代、隣のクラスに高橋英樹がいてね。卒業が近くなった頃に、日活に採用されたんだと思う。学校に『週刊明星』の記者が取材に来ていたよね。でも、学校時代はあまり目立たなかったんだ。卒業して1年くらいして、赤木圭一郎の代役とか言われて売れたんだよね。チャンバラ映画じゃ、同い年の北大路欣也と並ぶ二大スターだろう。いい役者になったよなあ」

 

藤井さんは、高校を卒業して父親が営んでいた「ことぶき寿司」の仕事につきます。

「オレが仕事を始めた頃は、このへんは賑(にぎ)わっていたね。ニッケコルトンプラザのところに日本毛織の工場があって、女工さんたちが中山に買い物に来ていたよ。『ニッケ』って日本毛織のことだからね。西船橋駅もまだできていなかったし。何より中山競馬場に厩舎(きゅうしゃ)がまだあって、たくさんの人が働いていたから。パチンコ屋も駅前に3軒あったんだ。あれから60年も経っちゃったんだね」

 

西船橋駅が作られたのは1958年、中山競馬場の厩舎の移転は1978年、日本毛織の工場は1982年まで操業し、コルトンプラザができたのは1988年とありました。「葛飾誌」には「競馬場開催の日は…乗り物にアブレた多くの人が黒門を通りぬけ、参道の坂を三三五五と登って行き山門をくぐり境内に出る」と書かれています。

 

「昔は、今の東中山駅のところに競馬の日だけ開く臨時の停車場があったくらいでね、みんな下総中山駅で降りたんだよね。馬券も当日じゃないと買えなかったし、窓口の穴に手を突っ込んで買うような仕方でさ。だから、レースが終わると一斉に人が出てきたんじゃないかな。オレもさ、スピードシンボリが有馬記念で勝った時、はじめて千円の馬券を買ったんだけど4,100円ついてさ、嬉しかったな」

昔はずいぶん人が多かったようですが、周りの環境が変化したということでしょうか。今やJR西船橋駅は千葉県内で最も乗降客の多い駅となりました。

 

「隣に西船橋駅ができて、オシャレでさ、人がそっちに行くのかねえ。中山は、昔からそんなに変わっていないし、いい街だと思うんだけどなあ」

 

そう、中山はとても風情のある街並みです。

というところで、時間となりました。お店の紹介はまたの機会ということで。

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